彼女たちは帰ってこない

私の経営する英語学校での出来事から。

これまで断固として対面学習に固執してこられたシニア女子に対し、緊急事態宣言をいいことに、ほぼ強制的にZoomを使ったオンライン授業を試してもらった。

つながるまでの苦難(これを乗り越えたのは大きな経験だ)はさておき…結果は「オンライン授業がこんなに楽だなんて」と皆さんがまさに「はまった」感じ。

それもそのはず。仕事を持たないシニア女子に対し、教室で開催される2時間の授業のために1時間程度の準備(おめかしタイムを含む)、往復2時間の通学時間(のんびりの徒歩を含む)を加えた約5時間を強いていたのだ。これは相当な熱量だ。

私自身はそれが分かっていたので彼女らに「オンライン授業はほんと、楽ですよ!」と勧めてきたのだが、これまでずっと、軽ーく拒否られてきた。

そんな彼女らが経緯はさておき、とうとう家にいながら上着だけ着替えて(下はパジャマ)、軽く化粧して(すっぴんもおられる)、スタンバイOK。さあ2時間がんばりまししょう。先生、お願いしまーす!で始まる楽な授業を知ることになってしまったのだ。

Zoomの画面をのぞいてみると、あらまあ皆さん、ニコニコ笑っておられる…まあ、よしとしよう。

この様子だと、私の勘では「パソコンなんてダメ。みんなで集まって勉強するのがいいのよ」と言っておられた彼女らはきっともう教室に戻ってこない。

家でできることにわざわざ足は運ばない。無駄な時間は使わない。なぜなら彼女らこそ、地球上でもっとも合理的な生き物なのだから。

これからの理由はきっとこうだ。

「もう歳やから教室に行くのが大変で…」

ちょっと前までこういっていたのではなかったか?

「もう歳やからパソコンを覚えるのが大変で…」

私が「ちょっと前までオンラインはあかんておっしゃってましたけど…」などど上げ足を取ろうものなら、瞬間的にサンドイッチマンの冨澤に変身して「ちょっと何言ってるかわかんないんですけど…」と真剣なボケをかます大阪人スピリットが発揮されるはずだ…

とにかく、彼女らはきっと帰ってこない。私にとって教室存亡の危機だ。いや、家賃負担から開放されるかもしれない吉報だ。思いはぐるぐると頭の中を駆け巡る。眠れない夜が続く…

コロナウイルスが確実に変えたのは、間違いなく、常識だ。未来形ではなく、すでに過去形、変わってしまったのだ。

いつの世も、世界はこのような女性の気分で動いている。景気とは女性の気分のことを言うのだ。これこそが男子が認めたくない、真実なのだ。

と、ぼやくのにも疲れたので、もう遅いから今夜はベッドに入ろう。そして明日もシニア女子たちの笑顔を見るためにパソコンのスイッチを入れよう。なぜかしらZoomの画面を通して接する彼女たちが以前より身近に感じるのだ。キュートだとも思う。この不思議な感覚は私だけなのだろうか。

投稿を作成しました 3

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

検索語を上に入力し、 Enter キーを押して検索します。キャンセルするには ESC を押してください。

トップに戻る